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IRサイト構築・制作に必要なことは?コンテンツごとに重要度を解説

IRサイト構築・制作に必要なことは?コンテンツごとに重要度を解説

こんにちは。IRサイトの制作や改修の際にどういった情報を充実させればよいのか悩むことはないでしょうか。毎年ステークホルダーに求められる情報が多くなる中私も日々悩んでおります。

今回はIRサイト構築にあたり必要なことについて私なりの考えをお伝えしたいと思います。

 

IRサイト構築・制作に際し最初に必要なのは、目的・ターゲットの明確化

 

IRサイトを制作するケースとしては、上場(準備段階)時に一から制作する場合や、IRサイトはあるものの古くなっており改修する場合など様々あります。

では、どういったページ構成にする必要があるでしょうか。私もいろんな会社のサイトを見ましたが、会社概要+αのケースもあれば、サステナビリティ情報だけでも膨大な量がある会社まで様々です。

どのような状況であっても、まず考えないといけないのは自社のIRにおけるターゲットをどこにするのかということです。以前の記事でも書きましたが、時価総額等各社の置かれる状況は異なります。

ですので、効率よくサイト制作を進めるにあたっては自社においては以下それぞれのどの投資家層がターゲットなのか明確にしたうえで各ページの制作を進めたほうが良いのではと思います。

個人投資家のみがターゲットの場合

基本的に時価総額が300億円に満たない企業の場合、機関投資家の投資対象になることは少ないため、個人投資家をターゲットとすることが多くなると思います。

その場合、個人投資家の方に興味を持ってもらい、売買に繋げるために会社の概要、特徴、強み、成長戦略、株主還元等一覧の情報が把握できるようなサイト作りが必要ではないでしょうか。

一方で、時価総額が低く海外機関投資家との対話はまだ難しい場合などは英語サイトについては優先度を落としてもよいのではないかと考えられます。

個人投資家に対して効果的なコンテンツについては後述します。

機関投資家との対話も実現できている場合

海外機関投資家との対話も実現できる場合には、日本語サイトのみならず、英語サイトも充実させることが望ましいです。また、最近では、機関投資家においては投資判断にESG情報も活用しています。ESG評価が低いと足切り(投資除外)となる可能性もあります。

そのため、自社の財務情報だけでなく非財務情報も充実させることでESG評価機関や機関投資家の評価を少しでも高める努力をしたほうが良いと思います。

機関投資家に対して効果的なコンテンツについても後述します。

一般的なIRサイトの構成は?

 

一般的なIRサイトに掲載している情報は次のような内容です。各種開示、提出資料をもとに制作できるものも多いかと思います。とはいえ、一度に多くのコンテンツを制作するには時間がかかると思いますので、開示情報をベースにできるところから徐々に充実させていってはどうでしょうか。

なお、機関投資家にも保有してもらえている上場会社においては、個人投資家向け情報を除き英語サイトでも同様の情報があったほうが望ましいです。

↓大項目 ↓小項目 ↓ターゲット ↓重要度
IR情報 ニュース、イベント リリース、適時開示 個人・機関問わず
IRスケジュール 個人・機関問わず
IR資料室 決算短信 個人・機関問わず
決算説明会資料 個人・機関問わず
統合報告書・アニュアルレポート 機関投資家
株主通信 個人投資家
有価証券報告書・四半期報告書 機関投資家
経営方針 中期経営計画 機関投資家
IR方針 機関投資家
事業等のリスク 機関投資家
業績・財務情報 業績ハイライト 個人・機関問わず
財務ハイライト 個人・機関問わず
キャッシュ・フローの状況 個人・機関問わず
セグメント情報 個人・機関問わず
株式・株価情報 株主総会 個人投資家
株式手続きの案内 個人投資家
株主還元方針 個人・機関問わず
株価、チャート情報 個人投資家
個人投資家向け情報

 

会社の強み・特徴 個人投資家
個人投資家向け説明会資料 個人投資家
用語集 個人投資家
その他 よくあるご質問 個人投資家
IRに関する問い合わせ 個人投資家
免責事項、サイトマップ 個人・機関問わず

 

このほか、企業全体の情報として、以下のコンテンツも投資家が確認します。

 

企業情報 会社概要 トップメッセージ
企業理念
役員一覧
コーポレート・ガバナンス
沿革

 

 

投資家のターゲット別に優先するべきコンテンツ解説

上記の表のうち重要度の高いコンテンツを中心に、いくつかピックアップして詳細を記載します。文中で紹介する事例は、いずれも大和インベスター・リレーションズ発行の2021年インターネットIR表彰にて最優秀賞を獲得した企業です。

ちなみに、同表彰の評価項目は以下の通りです。

出典:「2021年インターネットIR表彰」を発表 – 大和インベスター・リレーションズ

個人投資家向けコンテンツ1:株価情報

伊藤忠商事株式会社を始めとして、自社の株価を表示させている企業の多くは以下のような方法で掲載しています。

  1. IRトップページに株価情報の概要をまとめたボードを掲載
  2. ボード(またはその周辺)をクリックすると、詳細な値動きを確認できるチャートに遷移

時折、上記のようにIRページに埋め込む方法ではなく、Yahoo!ファイナンスなど外部の株価情報ページへのリンクを掲載している上場企業も見られますが、その場合はIRサイトランキングを始めとした外部評価の評価対象外となってしまいますのでお気を付けください。

また、せっかく自社IRページを訪問してくれた投資家を外部サイトに逃すことなく、回遊性を高めてくれることも重要なポイントです。

 

ターゲットを個人投資家とする場合、株価情報は重要な関心項目となります。費用の問題はあるかと思いますが、掲載の検討はしておいた方が良いと思います。

なお、IRコミュニティ運営(ストックウェザー株式会社)は自社株価表示サービスを提供しておりますので、ご興味がございましたらお問い合わせフォームからご一報ください。無料版のご用意もございます。

 

個人投資家向けコンテンツ2:個人投資家向け説明会資料

伊藤忠商事 – 説明会資料

個人投資家向け説明会の資料も重要なコンテンツです。実施している場合、その資料はIRページに掲載しておくのがおすすめです。

 

なお、伊藤忠商事株式会社では、説明会資料のPDF版だけではなく、説明会の様子を動画にして掲載しています。

外部評価上位の企業には動画を用意しているケースも多く、大和インベスター・リレーションズの2021年インターネットIR表彰の最優秀賞受賞企業では、9社中7社が掲載していました。

 

機関投資家向けコンテンツ1:統合報告書・アニュアルレポート

統合報告書は機関投資家が注目するコンテンツのひとつです。2021年インターネットIR表彰で最優秀賞を獲得した全ての企業がホームページで公開しています。

その中でも伊藤忠商事株式会社の公開方法はユニークで、PDFでの掲載はもちろんのこと、「オンライン版」としてIRサイト上にも再現しています。

 

これほどの開示ができれば理想的かと思いますが、一方で、統合報告書はコストがかかるコンテンツでもあります。IR協議会が公開している第29回「IR活動の実態調査」によると、IR支援会社を利用した統合報告書・アニュアルレポートの作成費用は平均で1,289.4万円とされています。重要度は高くとも、全ての会社が作成できるわけではないでしょう。

ただし、ホームページ上のコンテンツとして価値創造プロセスやマテリアリティを掲載し、会社としての統合的思考を開示することは実現していきたいものです。

機関投資家向けコンテンツ2:事業等のリスク

機関投資家が投資先企業を分析するにあたり、事業等のリスクも参考にするかと思います。こちらもホームページに公開しておくのが良いでしょう。

伊藤忠商事株式会社も、IRサイトに掲載しています。

また、事業全体をさらに評価しやすくするためか、同社ではPEST分析も公開しています。

個人投資家・機関投資家を問わず効果的なコンテンツ:業績・財務情報

 

個人投資家と機関投資家のどちらをターゲットにするか明確になっていない、または今後変化する可能性が高い場合、まずはそのどちらに対しても効果的なコンテンツである業績・財務情報紹介ページを制作するのが良いと思います。

業績・財務情報ページの中でもよく見られるのが業績ハイライト、財務ハイライト、キャッシュ・フローの状況、セグメント情報であり、双日株式会社はこれを1ページにまとめる形で公開しています。

上部のナビゲーションメニューを選択すると、対応する情報がグラフ+表の形式で現れます。

グラフ下部のチェックボックスをクリックすることで閲覧者が個別にカスタマイズすることができるので、投資家の分析の助けになります。

例:通期連結経営成績のグラフの項目を絞り込み、2017年と2022年データを比較

もし興味があれば、双日株式会社の実際のページで試してみてください。

このほか、データをエクセルでダウンロードできる機能もあると投資家に喜ばれるのではないでしょうか。

なお、IRコミュニティ運営(ストックウェザー株式会社)は業績・財務ハイライトやキャッシュ・フローの状況、セグメント別情報を表示できるサービスを提供しています。ご興味がございましたらお問い合わせフォームからご一報ください。

こちらのページに詳細も記載しています。

サステナビリティページについて

 最近だと多くの上場会社で「サステナビリティ情報」のページも設けられています。今回はあまり触れませんがそれぞれE(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)それぞれの方針、考え方、取組みを記載するとともにESGの各種データを掲載している会社が増えてきています。

こちらについてもESG評価機関の評価を少しでも向上するためには英語サイトでも同様の情報を掲載したほうが良いとされています。

一般的なIRサイト制作の流れは?

一般的なページ構成について記載しましたが、一からサイトの制作をする場合には通常自社のリソースだけで進めるのは難しくサイトの制作会社と一緒に進めることになるかと思います。その場合には、次のような流れになります。

 

  1. 制作に向けたヒアリング
  2. 制作会社からのデザイン、内容の提案
  3. 要件確定、デザイン作成制作、コーディング
  4. 校正
  5. テストサイトでの確認
  6. 本公開

 

IRサイトの運用を楽にするには?

 

制作の際に一つ注意したほうが良いのは運用のしやすさです。IRサイトに掲載する情報は重要情報が多く、掲載ミスのリスクは避けたいです。また、同じ時間に多くの掲載作業が発生することもあるので、掲載作業がスムーズにできるようにしたいところです。

制作会社によっては、適時開示資料やそれ以外の更新作業について比較的簡単にできる次のような機能をつけてくれる会社もありますので制作会社選定の際の基準の一つにしてみてはどうでしょうか。

・適時開示資料の掲載

TDnet、EDINETに掲載した場合、同時刻に同様の内容が自動で掲載されるような仕組み

・適時開示資料以外の掲載作業

リリースやスケジュールの更新について比較的簡単に掲載できるCMS機能。コードを知らなくても掲載作業ができ、また予約掲載も可能

最近改修作業を実施した私の事例:IRサイトランキングのレポートを取得して改善

現在のIRサイトのさらなる充実、改善を考える場合、何からどう手をつけたらよいのかわからないこともあるかと思います。ここからは私自身が昨年より取り組んでいるIRサイトの改善についてお伝えいたします。

 

まずはじめは同業他社や似たような時価総額の会社のサイトを色々見たり、現在サイト運営でお世話になっている業者さんにも意見を聞くなど情報収集に努めました。その中で見えてきた部分はあったものの、整理しきれない部分もあったので何かないかなと思案しておりました。

そこで参考にしたのがGomez、日興アイ・アール、大和インベスター・リレーションズが公表しているIRサイトランキングです。本メディアでも記事が公開されていますので参考にご覧ください。

IRサイトランキング各評価の違いと自社株価表示導入企業の順位の変化を紹介

秋口から年末にかけてそれぞれ3社が独自の基準で各上場会社のIRサイトを調査しランキングを公表しています。ランキングの数字ばかりを追ってもしょうがないですが、一つの参考になるのではと思い、このうちの1社に問合せし有料の改善レポートを提出してもらいました。

どんなレポートだったのか?

 主には、自社、他の数社のサイトの採点結果と自社のIRサイトの改善ポイントの2点です。特に改善ポイントにおいては、どういった情報を充実させるべきか、また、当該ページに関しては英語サイト上でもページを設ける必要はあるのかなど期待以上の詳細なレポートでした。また、参考となる他のサイト情報も教えていただいたので、その後の改善に向けて具体的なイメージを持ちやすくなりました。

その後のアクション

 改善レポートを提出してもらった後、実際の改善ページについては社内の関係者と協議したうえで決定、各ページの構成についても改善レポートに記載された他のサイト情報も参考にしながら構成案を作成しました。そのうえで制作会社に依頼し現在改善作業を進めているところです。

最後に

いかがでしたでしょうか。

コーポレート・ガバナンスコードの改訂、気候変動リスクの開示などIRサイトの制作・改修にあたっても考慮しないといけないことは年々多くなっておりついていくのが大変だなと日々感じております。

また、今回記載しませんでしたが、ユーザビリティ向上のためにはWebサイトのトレンドなどを把握したり、せっかく制作したIRサイトを見てもらうためにはアクセスアップのための施策検討も必要だと考えています。まだまだやることは多く日々勉強です。

皆様にとって少しでも参考になりましたら幸いです。

最後に、本稿の内容を簡単にまとめます。

  • IRサイトの構築には、投資家のターゲティングが必要
  • ターゲットとなる投資家を決めたら、ターゲットに対して効果的なコンテンツを優先して拡充
  • 個人投資家:株価情報の表示、個人投資家向け説明会資料の掲載
  • 機関投資家:統合報告書・アニュアルレポートの発行、事業等のリスク紹介ページ
  • 個人投資家・機関投資家問わず:業績・財務情報の掲載
  • 制作会社には運用の効率化に有効な機能を付帯させてくれるところも
  • IRサイトの改善にはIRサイトランキングの改善レポートが有効

ご意見、ご感想いただけますと幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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