SDGs(エスディージーズ)。新聞、テレビCM、街頭広告などでよく聞くようになった単語です。
その認知度は確実に高まっており、2020年時点で約5割のビジネスパーソンが把握しています。
一方で、少なくとも5割の人が知らないこともまた事実。
特にIR担当者や広報担当者なら、これからの時代、絶対に知っておかなければいけません。
この記事では、「SDGsのことがよくわからない」という人に向けて、こんなことをお伝えしていきます。
- SDGsとは何か
- 企業がSDGsに取り組むメリットとデメリット
- 具体的にはどんな活動なのか
5分ほど読んでいただくだけで、SDGsをざっくりと理解でき、自社の活動にどう活かせるか、考えられるようになりますよ。
SDGsとは、すべての人類が目指すゴール
SDGsとは何か、一言で言うなら「すべての人類が目指すゴール」です。もちろん日本も含まれています。
温室効果ガス増加に伴う地球温暖化や、貧困、差別、飢餓、ジェンダー問題など、世界全体が抱える問題の解決を目的としています。
こうした概要を聞くと、「すべての人類が目指すゴール? それって売上や業績に関係ある?」と思ってしまうかもしれませんね。ですが、意外にもビジネスの現場に直結してきます。後ほど具体的にご説明します。
さて、SDGsを略さずに書くと、Sustainable Development Goals。持続可能な開発目標と訳されています。
その目標(ゴール)の数は17個です。
17のゴールを完遂するための小ゴールのようなもの(ターゲット)が169個あり、企業はそれを達成できるようなビジネスを行い、17のゴールを目指していく、というのがSDGsの大まかな概要です。
今回は「企業がSDGsに取り組むメリットとデメリット」について手早くお伝えしていきますが、17のゴールと169のターゲットについて詳しく知りたい方はこちらをご参照ください。
企業がSDGsに取り組むメリット=ビジネスチャンスの獲得
SDGsとは世界の取り組みです。
「売上を伸ばすのに大変なのに、なんで社会貢献なんてしなければならないのか」。
企業とは売上や利益を追求するものですから、そんな風に思ってしまうのも無理はないことかもしれません。
ですが、考え方を変えましょう。SDGsは売上や利益に直結する可能性があるのです。
メリット1,売上増加=消費者が選ぶのは、SDGsに配慮した商品である
博報堂の調査によれば、消費者の8割以上が「生産・製造時に環境に負荷をかけない商品を買う」という購買意向を持っています。
その他の意向に目を向けても、環境に配慮したものを買う、という判断基準がすでにできあがっていることがわかります。
すなわち、SDGsに配慮していることが、商品のアピールポイントになっているのです。
SDGsへの取り組みが売上に繋がる、最もわかりやすい例と言えるでしょう。
今回取り上げたアンケートは全国20-60代の男女6,000名を対象にしているため、最もダイレクトに関係するのはBtoCの企業です。
しかし、そうしたBtoC企業に納品を行うBtoBの企業であっても、他人事と考えるのは大変危険です。
なぜなら、BtoC企業は自社PRのため、SDGsに配慮したサプライヤー・ベンダーを選ぶ可能性があるからです。
こうしたSDGs配慮の波は、小売りから原材料製造まで、ほとんどの企業に及ぶでしょう。ITや金融、サービス業などでも、無視できるものではありません。
「SDGsに取り組む」ことはビジネスチャンスであり、「SDGsに取り組まない」ことはリスクです。
取り組んだ場合は、積極的にアピールしていくことも必要です。
なお、SDGsに関する具体的な取り組み方については、後ほどお話しします。
メリット2, 採用活動で有利を獲得=企業イメージが向上するため
SDGsに配慮した商品が売れれば、その企業のイメージも向上する、ということは想像できますよね。同様に、企業ホームページでSDGsへの取り組みをアピールすることも、イメージ向上に繋がります。
こうした行動は一種のブランディングとなり、結果的にその企業への注目度が高まります。特に新卒就活生は社会貢献度が高いか否かで企業を選ぶ傾向にあるため、SDGsがダイレクトに関わるのです。
出典:就活生の企業選びとSDGsに関する調査(2020年8月)
SDGsについて、就活生の間では8割以上が「知っている」「聞いたことがある」と答えており、加えて社会貢献度も企業を選ぶ基準となっています。今後、SDGsが優秀な人材を確保するために欠かせない取り組みとなるのは間違いありません。
ちなみに、SDGsは中学校や高等学校の入試問題で出題もされており、今後も認知度は上がる一方でしょう。
いわば「SDGsネイティブ」とでも呼ばれるべき就活生たちは、世界的な課題に取り組んでいない企業を相手にするでしょうか?
こうしたことは、中途採用でも同様です。
先述したようにSDGsへの取り組みが売上に繋がるとなれば、企業の生存にまで影響があるわけです。生存戦略をしっかりと展開していない企業は、転職者からは魅力的に映らないはずです。
メリット3, 資金調達の容易化=投資家の投資基準になるため
SDGsへの取り組みは、投資家が投資先に選ぶか否かの判断材料になります。
投資家からの投資を受けられれば、企業は資金調達が容易になります。すると、新たな事業にすぐに着手してビジネスチャンスを掴んだり、設備投資をして製品の販売数を伸ばしたりと、経営上で有利になる恩恵をたくさん教授できるのです。
投資家の着眼点を3点紹介します。
- 環境/Environment……温室効果ガス排出量への配慮、気候変動対策、再生可能エネルギーの活用など
- 社会/Social……労働環境の改善、人権への配慮、女性の役員登用など
- 企業統治/Governance……法令順守や情報開示の姿勢、社外取り締まり役の設置など
いずれもSDGsと深く関わっていますね。
SDGsの認知度が高まっている現状、こうしたことにしっかりと取り組んでいなければ、長期的な収益性や持続性がないと判断され、投資先から外されてしまう恐れがあるのです。
なお、こうした着眼点での投資はESG投資と呼ばれています。3つの着眼点の頭文字から名づけられました。
SDGsに取り組むデメリット
SDGsに取り組むなら、メリットだけでなくデメリットを知る必要があります。
両方を比較しなければ、広報や経営のかじ取りはできません。
しかしながら、結論からお話しします。SDGsに取り組むメリットとデメリットを天秤にかければ、通常、メリットのほうが大きく勝ります。
なぜなら、「SDGsに取り組まないデメリット」が存在するからです。
さて、最初に知っておいていただきたいのは、デメリットは企業ごとに違いがあるということです。
経営状況や社風によって変わりますので、自社に関係するデメリットかどうか、想像しながら読み進めてみてください。
デメリット1, コストがかかる可能性がある
一つ目のデメリットは、コストがかかる可能性があるということ。
わかりやすい例では、SDGsに配慮した素材や製品の開発費が挙げられます。
リサイクル可能な素材で製品を開発したり、再生可能エネルギーを利用する製品を新たに開発する、その際の費用のことです。
例えばカフェで使用されているストローが紙製に置き換わりつつありますが、この紙製ストローの開発にもコストがかかったはずです。自動車の電動化も同様で、すでに関係各社は費用を投じて動いていることでしょう。
製品の開発なのですから、当然コストがかかります。SDGsに配慮した設計をしなければならない、つまり新しいことをしなければならない以上、通常の製品開発よりもコストがかかる可能性があるのです。
逆に言えば、こうした費用を埋められるのであれば、低コストでSDGs活動を実施できます。
紙製品ベンダーとの付き合いがあるなら安く納品してもらえるかもしれませんし、内製できるならなおさらです。
また、現在使用中の部材や部品をオミットすることで、SDGs活動を題目に掲げながらコストダウンをする荒業も可能です。
製品の包装をひとつ減らしたり、別製品で使っている紙製の包装を流用する、といったやり方が考えられます。
デメリット2,社員の理解を得るのに時間がかかる
SDGsの活動を正しく行うには、なぜ取り組むのか、社員に理解してもらわなければいけません。
「通常業務でいっぱいいっぱいなのに、なぜやることを増やすのか」。
「現状の製品で問題ないのに、なんで工数をかけてまで開発するのか」。
現場からは、そんな声が上がることが想像されます。
残念ながら、SDGs活動を始めたとしても、具体的にどれほどの売上効果があるかはわかりません。業界によっても違うでしょうし、顧客によっても変わるでしょう。
SDGsに取り組むメリットには、売上だけではなく、採用活動での優位性や投資家との関係構築が含まれます。ですが、現場の、特に営業の社員は、売上以外にはあまり興味がないかもしれません。
社員からの理解が得られない状態が続くと、意識のミスマッチが起きることになります。
会社としては「SDGs活動に力を入れている」とアピールしておきながら、現場ではさほど取り組めていない状態になるわけです。
この状態は「SDGsウォッシュ」と呼ばれ、実態の伴わないSDGs活動として、企業イメージを損ねてしまう可能性があります。
「SDGsに取り組まない」デメリットこそ要注意!
SDGsに取り組むデメリットが存在することは事実ですが、一方で、取り組まないデメリットが多いことも理解しておかなければなりません。
取り組むメリットは、「売上や事業の拡大」「採用活動での優位」「投資家との関係構築」の3点。
しかし、SDGsに取り組まないということは、顧客や求職者、投資家のイメージを大きく損ねることになり、
- 売上の減少、事業縮小
- 優秀な人材の流出
- 資金調達の失敗
といった事態を自ら引き起こすことになるのです。
これらは単なるメリットの裏返しではありません。
「売上拡大ができない」ではなく、「売上が減少する」のです。人材や資金調達についても同様で、現状から大きく後退する可能性すら存在します。
SDGsに取り組むメリットが3点、SDGsに取り組まないデメリットが3点。
SDGsに取り組むデメリットが2点。
自社の天秤にかけたらどうなるか、想像してみてください。
おそらくは、「SDGsに取り組みつつ、デメリットを軽減していこう」と考えることになるでしょう。
SDGsへの取り組みの具体例
SDGsに取り組むメリットやデメリットについてご説明してきました。
メリットがわかると、SDGsへの取り組みとは具体的に何なのか? どんなことをアピールすればいいのか? といったことが気になると思います。
SDGsへの取り組みの紹介は、17のゴールに沿って紹介していくのが一般的です。
難しいことではありませんので、具体例を見ていきましょう。
(※情報は2021年10月時点のものです)
トヨタ自動車株式会社 – 自動運転技術による貢献
世界に誇る日本の製造業、トヨタ自動車もSDGs活動に力を入れています。
例えば、自動運転技術開発による、交通事故死傷者ゼロ社会の実現。
これらは、SDGsの17のゴールのうち、以下のものに沿った活動です。
上記の引用画像の左下にある、カラフルな3つのボックスに記載されています。
交通事故は人々の死傷に直接かかわるので、「すべての人に健康と福祉を」にコミットできていますね。それをPRすることで、トヨタ自動車はSDGsを意識したビジネスに取り組んでいる、と主張しているのです。
トヨタ自動車のホームページには、ほかにも多数の事例が記載されています。
製造業ならば参考になるものも多いのではないでしょうか。
キャスレーコンサルティング株式会社 – 社会問題を解決するシステムの開発
Webシステム開発事業などを営むキャスレーコンサルティング株式会社では、開発途上国の若者と日本企業をマッチングするサービスや、うつ病の前兆などをAI解析で検知するシステムを、SDGs活動として紹介しています。
これらは、SDGsのふたつのゴールにミートしています。
社会問題を解決するプロダクトでありながら、広い市場にフォーカスを当てているようです。
このように、SDGsをビジネスチャンスととらえて開発を進めていくのが、社会問題の解決と自社の業績拡大を図ることができる、最も望ましいやり方です。
ダイワ運輸株式会社 – 働き方改革をSDGsに
ダイワ運輸株式会社では、男性社員の育児休業をSDGs活動として取り上げています。
これは、以下のゴールに沿ったものです。
働き方改革は以前より推奨されていることですので、すでに取り組んでいる企業は少なくないでしょう。実績がある場合はそれもアピール材料のひとつです。
すでに働き方改革を進めているならば、社員への理解も得られやすいでしょう。
株式会社かんぽ生命保険
かんぽ生命保険では、自社の保険商品の提供をSDGs活動に位置付けています。
養老保険や終身保険の提供が、これらの問題解決につながる、としています。
かんぽ生命保険の例は、自社製品がそのままSDGsへの取り組みになるわかりやすい例です。まずはSDGsのゴールを一通りチェックし、自社商品がそのまま活動に繋がっていないかどうかチェックしてみると良いでしょう。
重ねてになりますが、SDGsについて詳しく知りたい方はこちらをご参照ください。
まとめ・メリットを把握して、SDGsに取り組もう
以上、SDGsとその取り組みについてお話ししました。
内容をまとめます。
- SDGsとは、人類が目指すゴールであり、持続可能な開発目標と訳されている。
- 取り組むメリット1,売上拡大
- 取り組むメリット2,採用活動有利を獲得
- 取り組むメリット3,資金調達の容易化
- 取り組まないことで、売上の減少、優秀な人材の流出、資金調達の失敗などが起こりうる
SDGsへの取り組みは、意外と身近なところにあるかもしれません。
まずはSDGs17のゴールを確認し、自社ですでに取り組んでいるものがないか、確認してみてください。
あとはそれをホームページに記載するだけで、自社の取り組みとしてPRできるようになりますよ。
ちなみに、SDGsへの意識をもっと高めたいという方はこちらの記事もぜひお読みください。
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