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【新任IR担当者向け】おすすめ参考書や勉強をIR担当者が紹介!

【新任IR担当者向け】おすすめ参考書や勉強をIR担当者が紹介!

こんにちは。東証一部企業にてIR担当をしているKです。

IR担当に配属されたはいいものの、引き継ぎの時間がとれず、わからないことが多くて困っている! という経験はないでしょうか?

私も、2015年に転職してIR部門に配属された際は、半年、1年かけて学ぶというより、1か月で全て引き継ぐことになりました。当時のIR部門の担当者が1か月後に別業務担当に変更するというタイミングだったのです。

今回の記事では、そんな私の経験から、新任のIR担当者に向けてIR業務を理解するにあたっておすすめの学び方をお伝えします。

私がIR部門に配属になった後の数か月で経験したこと、IR業務を理解するにあたって参考にしたことをベースにしていますので、新任の方には参考になると思います。引き継ぎの時間が少ない、あるいは教えてくれる人がいないIR担当者にとって、効率的に学ぶ助けになれば良いと考えています。

私の配属後の数か月間はあっという間に過ぎましたが、その当時にしたことを整理すると主には二つに分けられます。

まず、①IR業務の目的、すべきことの理解、②実際の業務内容の把握です。大きくこの二項目に分けてお話していきます。

実施したこと – ① IR業務の目的、すべきことの理解

最初にお話しするのは、「IR業務の目的とすべきことの理解」のために行ったことです。

私は前職でIR業務は経験しておらず、何を目的に何をする仕事なのか分かっていませんでした。そのため、セミナーや書籍で必要な知識を学びました。

初めの1か月間は、IR業務全般について教わったり、機関投資家とのIRミーティングに同席したり、IR協議会主催のセミナーに参加したりしました。

その後、決算発表が近いタイミングとなり、決算発表後のIRミーティングの調整、決算説明会用資料、適時開示資料の準備、発表後のIRなどあっという間に数か月が過ぎたと記憶しています。

IR協議会主催のセミナーへの参加により、基本を学習

IR協議会ホームページ画像

(画像:IR協議会ホームページより)

所属している会社は日本IR協議会の会員になっており、当協議会主催のIR基礎講座という初心者向けのセミナーに参加しました。当時は年2回開催されており、IR業務の基本が2日間で学べるというもので、主なプログラム内容は次の通りでした。

事業会社のIR担当者による事例報告

当該会社において実施しているIR活動全般について説明いただきました。

具体的には、IR協議会の優良企業賞を受賞されているなど社外からの評価も高い事業会社でしたので、通常のIRミーティングだけではなく、工場見学会やテーマ別説明会、個人投資家向け説明会など様々なIR活動の事例をご紹介いただきました。

機関投資家の株式運用担当者・証券会社の調査部門(アナリスト)の方からみた望ましいIRの講義

機関投資家の株式運用担当者からは、投資家ってどんな人達なのか?といったことから、投資家の投資判断や対話での着眼点、判断プロセス、投資家から見た場合の望ましいIRの在り方について説明いただきました。

また、証券会社のアナリストによる講義では、彼らがどのように企業価値を分析、評価しているのか、IR担当に求める役割について要点を説明いただきました。

講義で特に参考になったのは「IR担当と経営陣との距離が近いことが望ましい」といった内容です。

投資家やアナリストとしては、開示内容だけでは把握できない企業の強み・特徴や経営戦略などの情報を知るために企業と対話をします。その際にIR担当が開示情報だけでなく企業の強みをきちんと把握していれば、彼らとしても有益な情報収集ができます。

また、経営陣との距離が近ければ投資家やアナリストの意見をきちんと経営陣にも伝えてもらえる担当者だという認識もしてもらえる話もされていました。ある意味、IR担当者は、経営陣と資本市場との間のハブとしての役割が求められるのだと思いました。

東証執行役員(上場担当)による講義

IR担当が知っておくべき取引所規則や最近の規制の状況などを学びました。

内容としては、なぜ適時開示ルールがあるのか、どういったケースで開示が求められるのかなど事例も交えて基礎的な内容を教えていただくというものでした。

 

以上のような形でIRを取り巻く様々な関係者から2日間でIR業務の目的、基本が学ぶことができました。IR活動する上で接するステークホルダーからIRで求められることについてレクチャーを受ける機会はなかなかないと思います。

私はこのセミナーに参加することで、その後社内に戻って業務の引き継ぎを受ける際にも、IR業務の目的を意識することができましたし、実務の参考にもなりました。

私がそのあと特に実務で実践した点は、IRミーティング時のコミュニケーションです。

投資家からの質問に対し回答するだけで終わらず、企業に対する評価や開示上の改善点をこちらからも質問するなど双方向のコミュニケーションをとるようにしました。また、投資家・アナリストからの意見を経営にも反映してもらえるよう経営陣にフィードバックすることを心掛けています。

このセミナーに興味がある方は、日本IR協議会にぜひお問い合わせください。

IRコミュニティ運営
IRコミュニティ運営
セミナーとは異なりますが、IRコミュニティ運営主催で、他企業のIR担当者や機関投資家を交えたIR情報交換会も開催しています。ご興味があればぜひ総合ページレポートをご覧ください!

IR情報交換会総合ページ

IR担当者の疑問に機関投資家が回答!SDGs意見交換会の様子を公開

 

書籍により、実務の理解を促進

IR業務において必要な知識としては、会計、コーポレートファイナンス、適時開示等様々ありますが、ここでは実務を理解するにあたり参考になった書籍を紹介します。

IRベーシックブック IRオフィサーのための基礎情報 日本IR協議会 編

IRベーシックブック画像

  • IR業務の基本
  • 実務
  • 他社の好事例

上記をさらっと学べます。また、最後に主要機関投資家、IR関連の書籍・ウェブサイトリスト、IR用語集などのデータ集が掲載されており、業務の上で参考になりました。

楽天IR戦記 「株を買ってもらえる会社」のつくり方 著者 市川祐子さん

楽天IR戦記画像

元楽天のIR部長の市川さんが2005年に楽天入社後約12年間にわたりIR責任者として経験したことについてまとめた本。実務担当者の視点で実際に取り組んできたことが書かれており非常に面白かったです!

こちらは2年前に発売されたものなので、私が担当になった2015年当時にはありませんでしたが、これから担当になる方には参考になると思いおすすめとして挙げました。

会社情報適時開示ガイドブック 著者 東京証券取引所上場部 編

2020年11月版会社情報適時開示ガイドブック画像

参考:刊行物・パンフレット – 日本取引所グループ

東証上場会社の実務担当者向けのマニュアルとして、東証において、会社情報の適時開示や企業行動規範に係る最新の実務上の取扱い等を体系的にとりまとめたものです。

この書籍は読み込むというより実務で必要な時に辞書ような形で使うものという位置づけです。適時開示ルールについては別の機会に具体的に取り上げたいと思います。

編注:ちなみに、適時開示についてはこちらの記事もご参照ください。

適時開示に該当するものは? 開示までの流れは? 適示開示の基本をおさらい!

 

実施したこと – ② 実際の業務内容の把握

では、次は実際の実務を把握するにあたって行ったことについてです。

IR業務の範囲については各社によって様々あるとは思います。だからこそ、その内容を各自で把握するのが重要です。

当社の場合、当時の業務範囲としては、決算短信を除く適時開示業務(決算短信は経理部門担当)と機関投資家・アナリスト向けIRでした。その業務について一通り把握するとともに、自社のビジネスモデルの理解するために社内の様々な関係者とコミュニケーションをとるようにしました。

以下、どなたでも参考になるよう、IR業務を把握した経験についてお話しします。

IR活動全般の把握は、とにかくミーティングに同席

はじめの約1か月間、機関投資家とのIRミーティングに同席し投資家とのやり取りを聞いていました。投資家からの質問内容、またそれに対してどのように回答しているかなど全てメモをとりました。

おそらくIR業務の担当になった直後はみなさんそうだと思いますが、初めは日本語なのに何を言っているのか内容を理解できないことも多かったです。特に業界用語など分からない用語は後で調べてまとめるようにしていました。

また、それ以外のIR業務に関しては、年間スケジュールをもとに、IRミーティング実施までの調整、各種IRイベントの準備・実施、IRサイトの更新など業務全般について引継ぎを受けました。

自社のビジネスモデルの理解は、自社・他社の書類を読むところから始め、社内各部署へのヒアリングを行う

実務を学びながら理解するように努めたのは自社のビジネスモデルです。

IR担当として社外のステークホルダーに事業活動全般を説明するうえでは、競合、法規制やサプライチェーンなどの外部環境の状況から、自社の特徴、強みまで一通り把握する必要があります。そのために、自社や競合他社の有価証券報告書や決算資料の内容を一通り読みました。

また、それだけでは全て理解することは難しいため、社内の各種会議資料や各部署の担当者へのヒアリングにより自社の特徴や事業内容全般をつかむようにしました。

このヒアリング時においてもIRミーティングと同様、業界特有の慣習、用語について理解するまで少し時間がかかりました。

例えば、会社にもよりますが、同じ「売上」でも営業部門が考える売上は「グロス売上」、一方で会計上公表しているのは割戻しを引いた「ネット売上」というケースもあります。その場合、同じ期間の売上でも資料によって書いている数字が異なるので注意が必要になります。また、社外に説明するにあたっては年度ごとの割戻し額によって利益率も変化するためきちんとリベートなどの割戻し額についても把握が必要になります。

その他、経営方針、経営戦略については経営陣に確認するといったことも必要になるでしょう。

最後に

いかがでしたでしょうか。今回は私がIR部門に配属された後数か月間にしたことなどをまとめて記載しました。

IR業務はニッチな職種で覚えることもたくさんあります。私自身振り返るとはじめの数か月はすごく不安もありましたし今と比べると全然理解もできていませんでした。とはいえ今も改訂ガバナンスコードなど日々新しいことを学んでいっております…。

皆様にとって少しでも参考になりましたら幸いです。

以下、本記事のまとめを記載します。

配属後に必要なことは2つです。

  1. IR業務の目的、すべきことの理解……セミナーへの参加、読書により実現
  2. 実際の業務内容の把握……機関投資家とのミーティングに同席。各部署担当者にヒアリングなどして、自社ビジネスモデルの理解を促進。

IR業務をするうえで他にも参考になった書籍などありましたらぜひ教えていただけますと幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

編注:IR担当者の仕事とは何か、特に中小企業が取り組むべき業務についてはこちらの記事をご参考ください。

IR担当者の仕事とは? 中小型株が取り組むべき業務をリストアップ!

 

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