こんにちは。東証一部企業にてIR担当をしているKです。
皆様の会社の株主構成はどうなっているでしょうか? 日本の上場会社における平均数値は、信託銀行約20%、外国人約30%、個人約15%、あとは国内法人、金融機関その他といった構成となっています。
また、東証一部の総売買高に占める海外投資家の売買高は約70%を占めます。
そういったこともあり、長期の安定株主確保、あるいはさらなる時価総額の拡大を目指すにあたり海外投資家向けIRを実施することは非常に重要な活動の一つと言えるかと思います。
今回は、海外IRの効果について私の経験などからご紹介いたします。
実際の効果は?
いきなり結論ですが、効果はありました。
細かい数字では申し上げにくいですが、直接対話した新規の投資家が興味を示しすぐに株主になってもらえたケースもあれば、その後何度かやりとりを重ね、2年後に株主になったケースもあります。
実際、その後の株主判明調査結果の実質株主のランキングを見ると、上位には海外IRで対話した投資家が何社か入っており、また、その後長期で保有してもらえるケースも多かったです。
また、各投資家は他の投資家ともネットワークがありますので、これまでコンタクトがなかった投資家らミーティングの依頼が入るケースも出てきます。
そういったことから、会社の認知、理解を深めてもらうために海外IRは有効だと考えています。
とはいえ、どんな上場会社でも対話が可能かというとそうではないかと思います。
どのような会社が実施したほうが良いのか?
まずは、現時点の自社の時価総額、流動性の状況から機関投資家の投資対象となりうるのか把握する必要があります。機関投資家の投資対象となる水準は、個々の運用機関ごとに異なりますが、時価総額が300億円~1,000億円程度が必要になるケースが多いと聞いたことがあります(違っていたら教えてください!)。
また、時価総額が高くとも流動性が低いと機関投資家の投資対象から外れることもありますのでその場合は流動性の向上に向けた施策が事前に必要です。
ですので、機関投資家の投資対象とならない水準の会社の場合にはまずは求められる水準まで引き上げるためのIR活動が必要だと言えます。このあたりの話はまた、別の機会に触れたいと思います。
なお、自社の状況がどうなのかは主幹事証券会社などに定期的にヒアリングしてみてください。
アレンジは主に証券会社に依頼。タイミングも重要
海外機関投資家の投資対象となる水準だった場合、どうやってアレンジしているのかですが、コロナ禍前の過去の事例ですと証券会社にアレンジを依頼していました。
投資家オフィス訪問でのIRの場合、地域としては、欧州、米国としていました。機関としては、欧州・米国それぞれ1週間程度としたり、欧州3日間、移動して米国で3日間とするなど、その時々の状況にあわせて実施していました。
実施時期は、中期経営発表後などエクイティ・ストーリーをしっかり説明できるタイミングが有効だと考えています。また、一度すれば後はしなくてよいということではなく、進捗説明も求められますので、その後、毎年、あるいは2年に一度実施するなど対話を重ねることも重要です。
アレンジはIRコンサルティング会社やサポート会社でも可能!
各投資家のデータベースを保有しているIRコンサルティング会社を通じて海外IRを実施するということも可能です。自社の状況に合わせたIRターゲティングを得意としているIRコンサルティング会社もあります。そういったところに依頼するというのも選択肢の一つになります。
なお、コロナ禍が訪れた現在ではオンラインでの海外IRサポートが多いかと思います。
ロングオンリーかつ自社を対象にしてもらえる投資家をターゲットに
投資家のターゲティングとしては、各社の戦略にもよりますが、ロングオンリーでかつ自社を投資対象にしてもらえるような機関投資家をリストアップしてもらい、アポイントを取っていくケースが多いでしょう。
スピーカーは主にCEOやCFO
多くの会社ではCEO(社長)、CFOなどの役員がスピーカーになっているかと思います。投資家としても、役員から直接エクイティストーリーを聞きたいので、CEOなど役員をメインスピーカーとするのが一番効果が高いです。もちろん、役員の都合がつかないという場合にはIR担当部署で対応するケースもあろうかと思います。
英語が話せないけど大丈夫なのか?
英語がそんなに話せないけど投資家とのミーティングは大丈夫なのかという不安をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
アレンジを依頼する証券会社やIRコンサルティング会社では、IRミーティングの実績のある通訳者を抱える会社をご存じですので問題なくミーティングすることは可能です。
ただし、当日スムーズな運営ができるよう投資家に説明する内容や国内でのIRで主な質疑応答など想定されるやりとりに関しては事前に通訳者に共有しておいたほうが良いです。
ちなみに、海外IR対応のために英文資料を作りたいという場合にはこちらの記事がおすすめです。
オンラインミーティングだけで十分ではないか?
コロナ渦で投資家とのミーティングもオンラインが中心になりました。私自身もオンラインを活用できるようになり業務がかなり効率的に実施できるようになったと実感しています。一方で、対面で会った人の顔は思い出せるけど、オンラインでミーティングした人の顔はなかなか思い出せないということを感じた方はいないでしょうか。私はたまにあります。
IRミーティングにおいても、相槌、ジェスチャーなどから感じられる経営陣の自信など非言語情報はなかなか画面越しからは十分に伝わらないと感じています。もちろん、以前のように戻らないでしょうが、今後はオンライン、対面の良い部分を活用した活動が主流になるのではないでしょうか。
証券会社の担当者から聞いた話ですが、最近は、「ぜひ直接対面でミーティングしたい。」とおっしゃる海外機関投資も増えてきているようです。
海外での新型コロナウイルスの感染状況次第ですが、感染の終息が見えてくれば海外の投資家オフィスを訪問してのIR活動を検討してはどうでしょうか。
その他事前のチェックポイント、よくあること?!
ここまでアレンジまでの話を記載しましたがそれ以外で事前に確認しておいたほうが良い点やよくあるトラブルなど記載したいと思います。
食事の場所
スケジュールを組むにあたり、どのタイミングでどこで食事をとるのかも決めますが、スピーカーとなる役員の食事の好き嫌いは事前に確認しておいたほうが無難だと思います。
もちろん、事前にスケジュールは事前に共有するので当日になって困ったということに名はならないと思いますが事前に確認しておいたほうがよさそうです。
飛行機の急なキャンセル、遅れ
行き・帰りの往復だけのフライトではなくいくつかの拠点を移動するケースが多いと移動回数も多くなり予定通りに進まなくなる場合も出てきます。多いのは飛行機の遅延などでしょうか。航空会社に話をし早い別の便に変更してもらうなど交渉できることもありますが予定が変更になるケースも出てきます。
こちらでコントロールできない部分が多いですが、予定通りにいかないのが普通ぐらいに思っておいたほうが良いかもしれません!
スリ、ひったくり
海外旅行の際にスリやひったくりにあった、あいそうになったというかも多いのではないでしょうか。役員と移動することになるのであらかじ車を用意するなどそんなに自由にいろんなところを出歩くことは少ないですが、日本より治安が悪い国も多いので気をつけてください!
最後に
いかがでしたでしょうか。今回は海外IRというテーマで執筆しました。
海外機関投資家の開拓はある程度の時価総額にならないと難しい部分もあり、また、海外機関投資家が株主になるということは求められる水準も高くなります。ですが、それによって自社の開示も充実させればより多くの投資家が株主になるチャンスにもなると言えますのでこれからの方はぜひチャレンジしてみてください。
皆様にとって少しでも参考になりましたら幸いです。ご意見、ご質問等ございましたらぜひコメントにください。最後まで読んでいただきありがとうございました。