ますます世界の注目を集めるESG(「Environmental(環境)」、「Social(社会)」、「Governance(企業統治)」)
気候変動問題やサステナビリティへの社会的な関心の高まりから、「ESG」という言葉を目にすることがとても多くなりました。ある調査によると、2020年時点で世界の機関投資家の75%がESG要素を投資戦略に組み込んでおり、その比率は近年増加の傾向にあることがわかりました。この動きの中で、企業が投資家から選ばれるためには、どのような情報をどのように見せていくかが大切なカギとなるでしょう。
ESGを語るうえでのフレームワークとプレイン・ランゲージ
ESG情報の開示基準を設定する団体として、国際統合報告評議会(International Integrated Reporting Council, IIRC)、サステナビリティ会計基準審議会(Sustainability Accounting Standards Board, SASB)、グローバル・レポーティング・イニシアティブ(Global Reporting Initiative, GRI)などがあります。自社の開示の目的や対象に合う枠組みを活用し、開示を充実させていくうえで、投資家に伝わる文章としてのテクニックであるプレイン・ランゲージも大きく寄与します。
IIRCのフレームワーク
実際にIIRCのフレームワークを見てみましょう。
『国際統合報告 <IR> フレームワーク』(2021年1月版)には、フレームワークの利用、基礎概念、指導原則、内容要素、一般報告ガイダンスについて説明されています。
このなかでも、指導原則のなかに「簡潔性」という項目があります。
「統合報告書は、簡潔なものとする。」という一文があるとともに、下記の内容が記されています(※内容を一部割愛しています)。
組織は、統合報告書の中で簡潔性と他の指導原則(特に完全性と比較可能性)との
間のバランスを取るよう努める。簡潔性を実現するために、統合報告書は、
- 論理的に構成するとともに、必要に応じて内部相互参照を設けることによって、繰り返し表現を避ける。
- 概念を明瞭に、できるだけ短い文章で説明する。
- 専門用語や高度な技術用語ではなく、平易な言葉を用いるのが好ましい。
フレームワークとプレイン・ランゲージの共通性
上記に挙げた内容はどこかで見覚えがありませんか。そうです、前回、ご紹介したプレイン・ランゲージ(プレイン・イングリッシュ)の基本原則と同じですね。下記の表では、フレームワークの内容と共通する、プレイン・イングリッシュの各原則を示しています。
『国際統合報告 <IR> フレームワーク』 | プレイン・イングリッシュ9つの基本原則 |
論理的に構成するとともに、必要に応じ
て内部相互参照を設けることによって、 繰り返し表現を避ける。
|
原則① 対象読者を明確に
原則② 結論を文頭に 原則③ 読む気になる紙面 |
概念を明瞭に、できるだけ短い文章で説
明する。 |
原則④ 文は短く
原則⑥ 回りくどい表現を避ける 原則⑦ 受動態より能動態(一般に受動態より、能動態のほうが短文になる。主語が明確になる。) 原則⑧ 否定形より肯定形 原則⑨ 主語・動詞・目的語を近くに |
専門用語や高度な技術用語ではなく、
平易な言葉を用いるのが好ましい。 |
原則⑤ 日常的な単語や表現 |
プレイン・イングリッシュは、読み手の立場から文章を作成します。特に忙しい投資家にとって簡潔な資料は歓迎されるでしょう。読み手ファーストの文章テクニックであるプレイン・イングリッシュの各原則の説明については、前回の記事をご覧ください。
プレイン・ランゲージを習得する方法は?
さて、プレイン・ランゲージを習得するにはどうすればよいでしょうか。
欧米始め、現在、世界の多くの国では、官公庁を始め、ビジネスでもプレイン・ランゲージが採用されています。また、2019 年にISO(国際標準化機構)がプレイン・ランゲージ規格の提案を承認し、現在、国際標準化に向けて活動が行われています。
残念ながら日本ではプレイン・ランゲージについてご存じの方がまだ少ないというのが現状です。しかし、世界のこうした動きと足並みを揃え、ビジネスをグローバルに行ううえでもプレイン・ランゲージを習得しておくことは大切です。
プレイン・ランゲージを習得する方法として、セミナーに参加したり、プレイン・ランゲージ推進団体(JPELC)からガイドラインを取り寄せ、勉強するという方法があるでしょう。
手前みそになり恐縮ですが、プレイン・ランゲージ推進のために、私が関わらせていただいているセミナー等を下記にご紹介させていただきます。
– JPELC(※Plain Languageガイドラインダウンロード – JPELC(Japan Plain English & Language Consortium:ジャパン・プレイン・イングリッシュ・アンド・ランゲージ・コンソーシアム))
日本で唯一のプレイン・ランゲージを推進する非営利団体です。プレイン・ランゲージのガイドラインを無料で発行しています。9月にはアジアで初めてプレイン・ランゲージに関する国際会議を開催します。
– (株)エイアンドピープル(※セミナー | 株式会社エイアンドピープル (a-people.com))
プレイン・ランゲージの研修を行っております。直近では3月24日にオープンセミナーを開催いたします。カタリスト投資顧問株式会社 取締役副社長COO 小野塚 惠美様をお迎えし、非財務情報開示の充実・改善のヒントをご紹介します。
株式会社エイアンドピープル オープンセミナーへのリンクはこちら
まとめ
ESG重視の傾向がますます強まる中、企業が投資家から選ばれるためには、ESGへの取り組みを中心とした非財務情報の開示を充実・改善していく必要があります。フレームワークを利用すると同時に、投資家に伝わる文章のテクニックとしてプレイン・ランゲージをお役立てください。