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機関投資家の興味・関心を解説!ミーティングを上手に進め、活用する方法とは?

機関投資家の興味・関心を解説!ミーティングを上手に進め、活用する方法とは?

IPOをしてある程度の時間が経てば、機関投資家とのミーティングを何度か経験していることでしょう。何度か経験しているのなら、「彼らは当社の何を知りたがっているんだろう?」と考えたことがあると思います。

ですが、たくさんの質問に答えることに精一杯で、こうしたことを整理できていなかったのではないでしょうか。

機関投資家は何を考えているのか。これはIR担当者として知る必要がある重要なことです。把握しておかなければ、投資をしてもらうチャンスだけではなく、自社にとって有益な情報まで逃してしまうでしょう。

本記事では、これまで機関投資家の興味・関心についてゆっくりと考えられなかったIR担当者に向けて、ひとつずつ整理し、お話ししていきます。

読んでいただくことで、改めて機関投資家を知り、関係作りから活用方法を学び、次回ミーティング時にすぐに実践できるようになります。

機関投資家とは? 分類についても解説

機関投資家とは、金融機関や年金基金やファンドなど、大きな資金を株式や債券で運用して収益を求める大口の投資家のことです。国内で代表的なのはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)でしょう。

機関投資家の数は数千とも数万とも言われますが、投資スタンスにより以下のように分類することができます。

  • パッシブ(インデックス):日経平均やS&P500など指数に基づいた投資
  • アクティブ:指数ではなく、個別銘柄の分析による投資
  • バリュー:株価が理論値より割安と判断される銘柄に投資
  • グロース:成長性が高いと判断される銘柄に投資
  • 大型/中型/小型株:時価総額の大小により投資

上記分類とは別に、東証においては海外機関投資家が存在感を増しています(保有割合30%、売買高割合70%)。

なお、セルサイド/バイサイドというのは、株式や債券などを投資家に販売する側と株式や債券などを購入して運用する側のことです。一般的に機関投資家といえばバイサイドを意味します。(セルサイドは証券会社や投資銀行など)

機関投資家と個人投資家の違い

一方、個人投資家とは端的に言うと一般人のことです。

機関投資家と個人投資家の違いは以下のとおりです。

機関投資家 個人投資家
資金力 大きい 小さい
法規制 多い 少ない
運用期間 長め 短め
情報量 多い 少ない
投資傾向 順張り 逆張り

機関投資家は第三者から資金運用の委託を受けて活動しているため、資格要件やコンプライアンス体制などの整備について様々な法規制を受けます。また、情報量が多く、専門家が分析したうえで投資を行い、運用期間は長めになります。

一方、個人投資家は情報量が少なく、自己の判断で投資します。テクニカル分析に頼った逆張り投資など、機関投資家とは異なる投資スタイルであることが多いです。

その他、事業会社なども資本市場に参加しておりますが、ここでは説明を割愛します。

機関投資家が知りたがっていること:新興企業の場合

機関投資家が発行体に求めている情報は、発行体の規模や業種、成長ステージによっても変わってきます。ここでは、新興企業に絞ってみていきましょう。

求める情報 趣旨 回答のポイント
創業の経緯 創業者が見つけた社会課題と創業者の思いの強さ
  • 社会課題をデータで説明
  • 創業者の言葉で創業者の思いを語る(時間が許せば数分の動画もアリ)
創業者の経歴 社会課題を解決する能力や創業者の思いの背景
  • 創業者の生い立ちや実績を、エピソードを踏まえて話す
事業の内容 事業内容の理解
  • 専門用語は平易な言葉で
足元の状況 現状把握
  • 財務情報だけでなく、非財務情報も伝える
3年後のビジョン 目先の利益水準
  • 赤字の場合は黒字化の目途
  • 成長を求められている場合は、成長力の源泉を説明(ヒト、モノ、カネ)
5年後のビジョン 現行事業の成功可能性
  • 何をもって成功とするか
  • そのために必要な経営資源の獲得方法
  • 成功した暁に何が得られるか
10年後のビジョン 発行体が目指す世界の達成可能性
  • 真に目指したい世界(現時点では夢物語でもOK)は何か
  • どんな条件が揃えば目指せるか
事業進捗を測る指標 客観的に事業進捗を測る指標
  • 発行体がどんな情報を発信・利用し、何が測れるか
強み(競争優位) なぜその事業を取り組むのか

なぜ今なのか

  • 経営資源を中心に説明
  • 経済情勢を中心に説明
弱み(リスク) 事業推進の障害と解決策
  • 解決できない弱みは、成長可能性と相反する。細分化し、回避・低減・転嫁・受容のどの対応かを明確にする。
競合 発行体との比較による発行体の分析
  • 上場会社における競合と、ビジネス上の競合の両方を伝える
機会 成長可能性と機を逸しない体制の確認
  • PEST分析などの外部環境分析から考えるのも一手

上記以外にも、例えば著名なファンドマネージャーである苦瓜達郎氏はその著書の中で、「沿革、特にターニングポイントについて丁寧に聞く」と仰ってます。

彼曰く、ターニングポイントにおける企業行動で、その企業の性格を把握し、投資判断に役立てるのだそうです。(苦瓜達郎「ずば抜けた結果の投資のプロだけが気づいていること」)

また、機関投資家に対して責任ある行動を求める「スチュワードシップ・コード」を知っておくことも重要です。同コードの8原則に沿って体系的に質問してくる機関投資家もいます。

なお、逆に機関投資家が知りたくない情報はインサイダー情報です。

私自身も大手金融系アナリストとの面談の際に、「インサイダー情報は話さないように」と念を押されました。

IPO直後のIR担当者は、経験も浅く、ついつい喋ってしまうことが多いのだそうです。インサイダー情報を話せば、相手方は一定期間投資できなくなりますので、当たり前のことですが改めて注意しましょう。

機関投資家とのミーティングはとにかく丁寧に

機関投資家からしてみればカバーしている数十社から数百社のうちの一つなので、全ての情報を正確に覚えておりません。(私があるセルサイドのファンドマネージャーから聞いたところによると、四半期で1社数十分もかけられないとのこと。)

そして、機関投資家は投機しないので、自分たちが理解できていない先に投資することはまずありえません。面談で丁寧に対応するか否かが、その後の株主構成にも関わってきます。

限られた時間の中で、いかに正確に自社の情報を伝えるか。一件一件の取材が勝負です。気を抜かずに頑張りましょう。

セッティング方法は3通り

① 証券会社からのセッティング

証券会社は機関投資家対応部署があり、機関投資家の要請を受けて発行体とスケジュール調整をします。

② 機関投資家から直接orみんせつ経由でのセッティング

小さいファンドの場合は、機関投資家から直接面談依頼が来ます。発行体から候補日時を幅広に伝え、面談形式も確認しましょう。

みんせつを利用している機関投資家は、みんせつ経由で発行体に直接スケジュール調整をしてきます。みんせつを利用していない発行体は、すぐに登録しましょう。

③ IR部門からのセッティング

IR部門は面談履歴や名刺情報、株主判明調査から目当ての機関投資家にアプローチし、面談をセッティングします。また、IR支援ツールを導入している場合は、競合他社に投資している機関投資家にアプローチすることも多いです。

準備の際は入念なインプットを

面談スケジュールが決まれば、面談履歴を読み直します。前回面談からのアップデートは、正確に漏れなくダブりなく伝えるよう準備しましょう。

また、大きいニュースがあった場合には、その経緯や反響についてもインプットが必要です。さらに、機関投資家の属性(投資業種、キャップ、グロース系、バリュー系)も当たり前ですが再度確認します。

面談の流れ

アップデートのみの場合は30分のこともありますが、大体30-60分が一般的です。

直近決算内容、前回面談からのアップデートに続き、計画数値達成の確からしさについて色々な角度から質問が来ます。

機関投資家からの質問に答えているだけでタイムオーバーになりがちですが、それではその面談は失敗です。

機関投資家に情報を渡すだけがIRではありません。インベスターリレーションという名の通り、機関投資家と関係を作ることが重要です。

機関投資家からの質問には正確に素早く回答しつつ、機関投資家の市況見通しや競合他社の状況についてしっかり聞き出しましょう。

フェアディスクロージャーには細心の注意を

一番気を付けないといけないのは、ついつい喋りすぎてしまうことです。

投資もしてくれてアドバイスもくれる機関投資家は貴重な存在で、ついついリップサービスしたくなります。

特に規模の大きい機関投資家の場合は、内部体制がしっかりしており、フェアディスクロージャーに抵触する内容は話さないでくださいと最初に念を押されます。

最近、私が参加したWEBミーティングでも、フェアディスクロージャーのためにミーティング内容を録画すると最初に案内がありました。

一方で、規模の小さめのファンドでは、まだまだ非公開情報を得ようとすることもありますので十分に注意しましょう。

機関投資家からの評価

私の場合、最初のセッティングに時間をかけないようにしています。

証券会社経由のセッティングにおいて、ほぼno timeでレスポンスして面談日を決めました。

その面談において、ファンドマネージャーから「レスポンスの早さも私独自の投資判断において重要」と言われ、結果、その機関投資家は投資してくれました。

また、みんせつ経由でもアポイントがよく入ります。特にコロナ禍において増えましたので、登録は必須です。

機関投資家とのミーティングの活用方法

IRにおける面談は、発行体の情報を一方的に機関投資家に伝えることではなく、機関投資家からも情報を得ることが重要だということは、前述したとおりです。

機関投資家から得た情報の活用方法は以下の通りです。

  1. 投資評価や競合他社の状況を経営陣に伝達し、経営戦略に役立てる
  2. 機関投資家からみた当社の課題について、解決策を模索する
  3. 上記を中期経営計画や決算説明資料に反映する
  4. 必要に応じて、知識のブラッシュアップを行う

私自身も「IPO直後の企業はもっと泥臭くIR活動をしたほうがよい」というアドバイスをロング(比較的長期間で運用する投資スタイル)の投資家から受けました。

当時ちょうどIPOから1年くらい経った頃で、少しずつ面談回数が減り始めていました。しかし、株価は堅調であったため、危機感はあまりなく、受け身のIRを続けていました。あの時、受け身のIRから積極的なIRに切り替えることができていなかったら、株価は低迷に陥っていたことでしょう。

まとめ

機関投資家とのミーティングについて執筆しました。

以下のようにまとめます。

機関投資家の興味・関心、知りたがっていることは、

  • 創業者の経緯や沿革、ターニングポイントについて
  • 中長期的なビジョン

逆に知らせてはいけない情報は、

  • インサイダー情報

ミーティングにおいて実践すべきことは、

  • 正確かつ素早い回答
  • 投資家との関係づくり(例としてセッティングに時間をかけない、など)

多くのIR担当者が兼務です。日々の業務に追われ、機関投資家対応が受け身になりがちです。

しかし、機関投資家対応の一つ一つが株価やエクイティストーリーに影響を与えます。

ここまで読んでいただいた皆様、これを機にもう一度自社の体制を見直しましょう。もし心当たりがあるようでしたら、まずは即座にミーティングを設定するようにしてみてください。

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