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【AI×IR】どのように活用できる?IR担当者の生成AI活用術

【AI×IR】どのように活用できる?IR担当者の生成AI活用術

IR担当者にとって投資家へ有効な情報発信を行う方法は多岐にわたります。生成AIはテキスト生成、要約、翻訳、データ分析など様々な機能を持ち、IR業務のアシスタントとして、情報発信をより効率的かつ効果的にする強力なツールとなると思われます。IR担当者は生成AIを活用することで、これまで多大な時間と労力を要した作業を自動化・効率化することができ、より戦略的で付加価値の高い業務に集中できるようになるでしょう。これから、生成AIの具体的な活用方法について、考えていきましょう。

 

成AIの活用術

 

情報収集・分析の高度化

投資家へ有益な情報を提供するには、市場や競合の動向、自社への評価を正確に把握することが不可欠です。以下では実際に筆者も活用しているプロンプトを交え、活用方法を紹介します。

 

・大量のニュース記事などを瞬時に要約し、市場トレンドや競合他社の動向を迅速に把握できます。例えば、「直近1年におけるトランプ関税を巡るニュース、競合他社の動向を1000字で要約してください」「○○業界の市場規模について、現在・過去・未来の取り巻く状況と、どのような事象が追い風、逆風となるのか、今後の展望についてどうなりそうなのか教えてください」といった指示をすることで市場分析が可能となります。

・SNSやメディアでの自社に関する言及を収集・分析し、投資家の関心事や懸念点を可視化することができます。例えば、「投資家やユーザーなど、様々な視点から代表的な意見などを集約して、具体的に例示してください」「消費者、投資家などによる不平・不満などにはどのようなものがあるのか、ネット上から該当する記載などを洗い出して、分かりやすくまとめてください」といったプロンプトなどが有効でしょう。

・アナリストレポートなどを分析し、投資家が自社に対して抱くセンチメントを定量的に測定することで、潜在的なリスク要因を早期に発見し、先を見越した情報発信が可能となります。

・ダルトン・インベストメンツ、オアシス・マネジメントなどの海外ファンドや、旧村上ファンド系投資ファンドなどのアクティビスト(物言う投資家)の投資戦略や要求内容などを学習させることで、潜在的なプレッシャーを予測し、事前の対策を講じることができます。

 

魅力的なコンテンツ作成の効率化

投資家の関心を引く、分かりやすいコンテンツを迅速に作成できます。

 

・過去の開示資料(決算短信、有価証券報告書、統合報告書など)を学習させ、最新の財務データや事業トピックスを入力するだけで、各種資料のドラフトを迅速に生成します。これにより、資料作成にかかる時間を大幅に削減し、効率的かつ一貫性のある情報開示を実現します。

・膨大な過去資料から、売上高、利益、主要事業の進捗、今後の見通し、配当方針、ESG目標達成度など、投資家が注目する重要ポイントを自動抽出して簡潔なサマリーを作成できます。

・過去の質疑応答やアナリストレポートを基に、想定される質問とその回答案を事前に生成することで、決算発表後の質問に対し、迅速かつ的確な回答準備が可能となります。

・製薬業界など専門用語が多く難解な内容となる場合でも、個人投資家に分かりやすい平易な言葉で解説することも可能となります。例えば、「この決算短信の要点について、専門用語を使わず、新社会人でも理解できるような文章を作成して」といった指示をすることで、個人投資家の理解度は高まるでしょう。

 

投資家とのコミュニケーション強化

迅速かつ丁寧なコミュニケーションは、投資家との信頼関係構築に欠かせません。

 

・他社のIRサイトにある「よくある質問」を学習させ、投資家からの定型的な問い合わせに対する回答案を自動生成します。

・IRサイトにAIチャットボットを設置し、投資家がいつでもIRスケジュールや開示情報を確認できる環境を構築します。これにより、投資家は必要な情報を24時間いつでも入手できるようになります。

・AIが投資家の属性や関心事を分析し、例えばESG投資に関心の高い投資家には、環境目標の進捗など最適なコンテンツを即時に表示できるようにします。

・またAIの同様の分析により、決算発表や重要なニュースリリースがあった際、投資家を関心事に応じてグループに分け、メールをカスタマイズして送信することができるようになり、投資家とのエンゲージメント向上や信頼関係構築に役立てることができます。

・プレスリリースや決算説明資料などを瞬時に多言語へ翻訳できます。これにより、海外投資家へもタイムリーな情報提供が可能になり、情報提供の壁を取り払うことができます。

 

IRイベントの支援

IR担当者にとって重要なIRイベントを効率的に行うための有力なツールとなります。

 

・過去の質疑応答データや市場トレンドをAIが分析し、投資家が関心を持つと思われるポイントを強調した、効果的なスクリプト作成を支援します。

・説明会中に寄せられる質問をAIが過去の開示情報や想定Q&Aと照合し、回答のヒントを提供します。これにより、経営陣やIR担当者は、より正確かつスムーズな質疑応答が可能になります。

・オンライン説明会のQ&A頻度やチャット内容、アンケート回答などをAIが分析し、イベントの品質向上と改善点を特定します。

  

IR活動の最適化

IR活動における様々なデータ収集が容易となります。

 

・サイトアクセス数、資料ダウンロード数、IRイベント参加者数など、IR活動に関する各種データをAIが自動で集計し、レポートを生成します。

・どの投資家がどの資料を閲覧したか、IR担当者との面談履歴などをAIが分析し、個々の投資家とのエンゲージメント状況を可視化するダッシュボードを自動生成します。

 

 

成AIを活用する上での注意事項

生成AIを有効に活用することで、投資家へ信頼性の高い情報発信を行うことが可能となりますが、リスク要因があることにも留意すべきでしょう。

 

情報の正確性は「人間」が必ず担保

 

・生成AIはハルシネーション(もっともらしい嘘の情報)を生成することが多々あります。特に財務情報や業績見通しなどの重要な数値データに誤りがあっては一大事となりますので、これを防ぐためにも出所やソースを示すように指示し、必ず人間の目でファクトチェックを行うことが必要となります。AIはあくまでも支援ツールであり、最終判断は人間が行う必要があります。出所やソースを示すことでファクトチェックがしやすくなります。

・AIが生成する情報には、意図しない偏りや誤解を招く表現が含まれる可能性もあるため、常に公平性、透明性を保ち、誤解を招かない表現を心がける必要があります。

・AIが生成した文章は無味乾燥になりがちのため、企業理念や経営者の情熱を伝えるには、必ずIR担当者自身が文章を推敲し、心の通ったメッセージに仕上げることが投資家との信頼構築に繋がるでしょう。

 

データの質と量を確保する

・生成AIの性能は学習させるデータの質と量に大きく左右されるため、自社の正確な開示資料、財務データ、社内ナレッジなど、信頼性の高い質の良いデータを十分に与えることが不可欠となります。

・とはいえ、一気にすべてのデータをAIに読み込ませるのではなく、一部の業務から段階的に導入し、その効果を検証しながら徐々に適用範囲を広げていくアプローチが望ましいでしょう。AIのパフォーマンスを維持・向上させるためには、継続的な学習と改善が必要と思われます。

 

「機密情報」の取り扱い

・未公開の決算情報などの機密情報については、情報流出リスクがあるため、一般向けのAIサービスに入力するのは控えましょう。必ずセキュリティーが担保された法人向けサービスを利用したうえで、社内ルールを明確に定めることが不可欠になります。

 

 

とめ

 IR担当者は生成AIを戦略的に導入することで、より効率的かつ効果的に投資家とコミュニケーションを図り、企業価値向上につながると思われます。ただ、導入・運用に際しては、AIの技術的な特性を十分に理解したうえで、必ず人間の目で最終確認し情報の正確性を担保する必要があることに留意しましょう。

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