企業のホームページに自社の株価情報を表示する ー このサービスは、弊社ストックウェザーが2002年にわが国で初めてスタートしたサービスです。
すでに20年以上が経過していますが、その実態について、この度全上場企業を対象に調査を実施しました。
加えて、米国企業の状況についても調査しましたので、ご参照ください。
国内上場企業の状況
2024年7月末時点の上場企業4,006社を対象に「企業のホームページに自社株価をどのように表示しているか」について調査した結果は以下の通りです。
まず、表示状況を、自社サイトに株価表示を組み込んでいる「シームレス」、金融情報サイトや証券会社のサイト等にリンクしている「リンク」、そして組込みもリンクもなく、株価情報がない「掲載なし」の3つのタイプに分類しました。
そのうえで、国内の上場企業4,006社を対象に調査を行った結果、「シームレス」は576社(14.4%)、「リンク」は2,278社( 56.9%)、「掲載なし」が1,152社(28.8%)となりました。
現状では、「リンク」が最も多く全体の半分以上を占めており、「シームレス」は15%弱、600社弱となっています。しかしながら、弊社の実績でみると、ここ数年「シームレス」の利用社数が大きく増加しています。
2020年に152社であった弊社サービス(有料)の利用社数は、2022年には東京証券取引所の市場再編を追い風に、前年比で17社増の179社に、そして2023年には前年比+30社の209社への大きく伸長しました。
今年7月までの実績を5年前の2020年と比較すると、+65社、増加率では+42%と大幅に拡大しています。
今後は定期的な全社調査を行う予定ですので、全体的な動向が報告できる予定です。
「シームレス」の提供会社別の状況は以下の通りとなっています。
弊社ストックウェザーでは、有料のサービスに加えて無料のサービスも提供しており、有料サービスは217 社、無料サービスは171社、合計で388社となっています。
有料サービスだけをみてもシェアNo.1ですが、無料サービスも含めると、全体の3分の2強を占めています。
本題に戻り、3タイプに分類した自社株価の表示状況を、さらに詳しく見てみます。まず、市場を切り口にしたものが以下のグラフです。
東証プライム、名証プレミアム、札証、福証では2割程度の企業が「シームレス」を導入しています。最も「シームレス」の導入割合が高い東証プライムでは30%弱の452社が自社サイト内に株価を表示しています。
業種を切り口にすると以下の通りとなります(シームレス割合が20%以上の業種を降順に表示)。業種に属している企業数に格差がありますが、単純な比較ではかなりの差異がみられました。
最も相関性が高かった切り口が時価総額による分布で、時価総額が1兆円以上の企業では、7割程度の企業が自社サイト内に株価を表示しており、「シームレス」の導入が進んでいることがわかりました。
その一方で、株価に対する強い意識からか、現状の時価総額が大きくなくとも、「シームレス」を利用している企業の存在は特筆すべきと考えます。
米国上場企業の状況
米国企業における自社サイトへの株価表示についての調査として、まずはダウ・ジョーンズの採用銘柄30社を調べた結果が下のグラフです。
調査の結果、すべての企業が何かしらの方法で自社サイトに株価を表示していました。
30社のうち1社では、コーポレートサイトのトップページに、23社ではIRサイトトップに「株価ボード」の表示がありました。「株価ボード」とは、株価や出来高などをコンパクトに表示するバナーのことを称しています。残りの6社でも、コンテンツメニューとしてストックインフォメーション等のページが設けられ株価が表示されていました。
事例としてBOEING社のホームページを見ると、IRサイトのトップページに株価ボードが掲載されています。
また、フッターにも株価が表示されています。
【参考】BOEING社IRサイトURL:https://investors.boeing.com/investors/overview/default.aspx
もう1社別の事例としてCISCOのページを見ると、同様にIRサイトトップページに株価ボードを表示しています。
さらに、株価チャートなどの詳しい分析ツールも搭載されています。
【参考】CISCO社IRサイトURL:https://investor.cisco.com/home/default.aspx
ダウ・ジョーンズ採用銘柄のような企業規模が大きく、株主数も多く、投資家からの注目度の高い企業では、「株価表示は当たり前」のようですが、他の企業ではどうなのか。
そこで、2024年にNYSEに上場した24社についても調査してみました。結果は以下の通り、ほぼすべての企業で株価情報が提供されていました。
上記より、米国においては、企業規模や上場キャリアの長短にかかわらず、株価情報を自社サイトで提供する姿勢が見られました。
弊社も株価表示に関するサービスを提供しているので、「その効果は?」、「証券会社や金融情報サイトに掲載されているので自社サイトに掲載する必要はあるの?」といった声を聴きます。では、米国企業はなぜ自社サイトに株価情報を掲載しているのでしょうか。
自社サイトを訪れた投資家に、企業の顔として株価をアピールする ― この姿勢が、米国で自社株価表示が「当たり前」になっている理由ではないでしょうか。
まとめ
わが国においては、東証からの「株価と資本コストを意識した経営」の要請により、株価の自社サイト等への表示が増えてきていると感じるものの、市場間あるいは時価総額の大小で格差があり、いまだ株価表示が一般的といえるほどとはいえず、投資家に株価をアピールする姿勢は発展途上と言えるでしょう。
一方で米国においては、企業規模の大小、あるいは上場からの経過年数の長短にかかわらず、自社サイトへ株価を表示する「シームレス」が極めて一般的であり、投資家に株価を積極的にアピールしていることがうかがえました。
株価は投資判断に欠かせない情報です。値段がわからず商品やサービスを買うことはありません。日本国内においても自社サイトに株価を表示する事が当たり前になれば、投資家の投資判断、投資行動もスムーズになることが期待されます。